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2017年がはじまりました!

いよいよ2017年、皆様いかがお過ごしでしょうか?
昨年に引き続き、中世音楽センターでは引き続き

◆アルス・ノヴァを学ぶ定期配信の通信講座
◆8月東京にて開催の各種講座(フランス人講師2名)

が参加者募集を続けております。
通信講座は来月2月からはイタリア・トレチェントの記譜法の勉強に入ります。これは通常のアルス・ノヴァの記譜法とは異なるシステムなので基礎の基礎から解説していきます。
もし通信講座に途中参加したいと考えている方がいたら、2月からの後半参加がわかりやすいでしょう。

通信講座は今後、ノートルダム楽派の記譜法についての新講座が開講されます。
ノートルダム楽派のモード・リトミック読譜には日常的な写本読み下し練習が欠かせません。
ぜひお楽しみに!

8月の各種イベントは、1月末が第1次締め切りです
現在生徒を募集中なのは、
8月18日(金)から20日(日)の3日間連続週末特別講座
14日から16日までの平日開催3種類の夜間講座

個別のレッスン〔希望者リスト作成中、レッスン詳細は後日決定〕
です。

8月週末特別講座は楽器演奏や歌唱を楽しむ一般アマチュアの皆様、既に演奏家として活動されているプロの方などが対象で、15世紀のレパートリーをとにかく演奏する、ポリフォニーを極める、フランス語歌詞の表現を深める、というかなり実践的な内容です。1月末までのご予約を見て、講座内で扱う楽曲(ポリフォニー作品)をフランス人講師2名とともに決定していきます。
最終日には講師3名が演奏するコンサート付き。
ぜひお楽しみに!

平日夜間講座は講師らの実演も聴ける講義形式の授業で、3回の講座でアルス・ノヴァ作品理解に欠かせない知識を学んで行きます。演奏家以外の皆様にも気軽に参加いただける内容です。

詳しくはこちらのパンフレットをご覧ください。
イベント詳細パンフレット

週末講座は限定30名、3日間の参加でお一人さま20000円。
まだ若干の残席がございます。

平日講座は残席にかなり余裕がございます。3回の講座すべてに参加で10000円。

ご関心ある方はまずは仮予約をお願いいたします。


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日本中世音楽センターのサイトを立ち上げました

Cantoria_Della_Robbia_OPA_Florence_9.jpg

ブログを見てくださっている皆様、いつもありがとうございます。
もともと日本語情報の少ないフランス古楽についてのもろもろを発信しようと始めたこのブログですが、このところ、出版のお知らせと講座開催やコンサート開催のお知らせ用にばかり使っており、日々のもろもろをつづる記事と、イベントなどの重要アナウンスとが一緒になってしまう点が気になっておりました。

出版物、そして日本で開催する講座やレッスンなどの催し物とコンサートは、ブログではなく別のホームページに情報をまとめたい。
そう考え、作りました。


中世音楽センター


少し前から、フランス在住の教授陣などと一緒に来日してのコンサートや講座をやろう、という企画があがっていたりして、それも考えて、少し大げさではありますがパリの中世音楽センターに倣った雰囲気を作るよう心掛けてみました。

今後、講座予約のページ、CD出版物のページ、そして講師紹介ページにさらなるアイテムと人員がプラスされるのを、皆様お待ちいただけたら嬉しいです。

今後はイベント詳細やコンサート、出版関係の情報は「中世音楽センター」のHPに纏め、こちらのブログでは軽いアナウンス以外、完全な「ブログ」として書き込みを続けようと思っています。
辻絢子の日々の体験談であったり、古楽についてのちょっと真面目な情報提供だったり、ブログだからできることもいろいろあると思いますので、こちら、継続します。

どうぞよろしくお願いいたします。

BnFのアーキビストたち

皆さんはアーキビストという単語をご存じですか?
アーキビスト、つまりアーカイブに携わる専門の知識を持った人々ですが、先週、ソルボンヌの授業の一環でBnF、つまりフランス国立図書館のアーキビストと面会をしたので、今日は少し、BnFについて書いてみようと思います。

フランスは言わずと知れた文化大国です。ルーブル美術館の年間入場者数は約9,260,000人、ダントツの世界一位をキープしており、昨年2015年度の文化予算は34,280,000,000ユーロ、日本円で約4,640 億円。これは国家予算全体の0.87%です。こう聞くと少ないような気がしますが、例えば日本の文化予算は国家予算全体の0.11%、ドイツやアメリカなど他の国々と比較してみてもフランスが文化にあてる予算は決して少なくはないどころか、非常に大きい割合です。
フランスにとって文化は、軍事や産業同様、国の重要なパワーです。フランスが文化的に豊かであればあるほど、その影響力は拡大し、経済的に優位に立て、観光客も集まり、強い国が築ける、というロジックです。ある意味で文化的な植民地主義ともとらえ得るでしょうが、とにかくフランスは攻めの姿勢で文化政策を行っています。

例えば教育。日本では美術や音楽は「情操教育」などと呼ばれて、とくに初等教育ではあまり理論的な取り組みがされていませんが、フランスでは、文化が社会にどんな影響を与えるのか骨の髄まで浸透する勢いで、歴史的役割から現代社会でのインパクトまで幼いころから知的に教育します。さらに、新たな世代が次なる文化を生むのに必要な資料、情報、器材に自由にアクセスできるよう、国家予算を使って根本的な学費などかなりサポートをするので、学生は美術館、映画館、コンサートなどで大幅な割引が受けられますし、音楽学校や美術学校などの学費は日本では想像ができないほど少額に設定されます。

教育と、次世代を支える動き、この両方にとって重要なのが、アーカイヴの存在です。

ルーブルには380,000点以上の美術品がアーカイヴされていますが、オルセーやポンピドゥーなどフランス国内の美術館それぞれを合わせた全アーカイヴの数を想像してみてください。宇宙的な数の文化的蓄積がフランス国内に集まっています。フランスで学生になるだけで、このコレクションが格安でいつでも見られる。これが、フランスのパワーです。美術館博物館、そして図書館といった形でより多くの人にアーカイヴが開かれ研究や創作がそこから発展すれば、文化はさらに豊かになっていきます。政府はそれ相応の予算を使って、文化的活動の活性化のため、アーカイヴの維持とさらなる発展充実を促しています(もちろん最近はその勢いが落ちてダメなところもあるという批判もたくさんありますが)。

こんなフランスが国家予算でがっちり支えている巨大アーカイブの一つが、BnFです。

BnFはいわずと知れたフランス国内最大の図書館で、所蔵しているのは印刷物、写本、手稿、浮世絵を含む版画などの絵画作品、レコードやCD、DVD、ブルーレイ、マルチメディア、などなど、点数にして4千万以上の所蔵品を管理しています。この4千万は、レフェランスの数で、実際の資料は手稿など1点ものを除いて納本制度により基本的に最低2部は保管しているので、倍以上の数字になります。
日本では国会図書館に納本をしなくてもISBNコードが出て一般的な販売が可能ですが、フランスは法律でかなり管理がされていて、BnFに最低2部の納本をしないと、書籍の出版ができない決まりになっています。さらにCDやDVDなどにも同じように納品の義務が課されており、年ごとに新しい出版物がありますからアーカイヴの数は増え続けています。

図書館は、現在、ベルシー地区トルビアックにある最新のBnFの建物のほか、リシュリューの分館やオペラ座の図書館など、複数の別館がありますが、今回私が訪問したのはベルシーのメインのBnFの内部でした。

ベルシー地区は最近再開発が進み、こじゃれた店や映画館、シネマテークが並ぶ楽しい地域になりましたが、BnFの建物はその中でもかなりの威圧感がある信じられないぐらい巨大な建物です。建物、というより、町の1区画丸ごと図書館に使った、と言って良い広さで、外側に見えている4棟の巨大なガラス張りのビルは氷山の一角、実際にはその地下に信じられないほど広大なスペースがあって、宇宙的規模のアーカイヴが広がっています。
平凡なパリ観光に飽きた海外旅行上級者なら、ぜひ、セーヌ対岸のベルシーのサーカス博物館サーカス博物館と合わせて、見に行ってほしい場所です。

地下のアーカイヴは、研究者のために開かれており、中に入りたい人は、BnFの入場パスを購入して予約を入れ、中に入ります。
「庭の階」と呼ばれる半地下のような資料閲覧スペースに入る入口は、パスを使ってゲートを開けなければならないのですが「地獄の門」という愛称がついており、一歩ゲートをくぐると、外から見えないその内部に、まさにダンテの地獄下りのようなちょっと不思議なスペースが広がっています。

さて、BnFはアーカイヴ数があまりに多く、あまりに広大なため、突然図書館に行って受付で「この資料を出してください」といっても、すぐには見れません。資料にもよりますが、複数の所蔵があって一般人が自由に閲覧できる通常の本で、手元に本を持ってきてもらうまで早くてもだいたい1時間ほどかかるそう。現在は、ウェブで資料の事前予約ができ、このシステムを使えば、予約しておいた時間に資料を用意しておいてもらえ、閲覧のための机もキープしておいてもらえます。
資料が貴重な写本などの場合は、研究内容を伝え予約をすると、専用の部屋に資料を用意してもらえますし、その場で写真撮影も可能です。
さらに、現在、Gallicaガリカと呼ばれるシステムで、BnFの資料の一部がデジタル化されて誰でも自由に閲覧ができます。ここには300万点以上の資料がアップされており、図書だけでなく、マニュスクリ、版画や手稿、そして音源資料(古いレコードなど)が入っています。音源資料はレコードの写真が見れるだけではなく、もちろん、音を聞くことができます。2014年の時点で3500件以上の音源資料がアップされていますが、現在はさらにBnFパートナリアと呼ばれる外部機関を通してさらに多くの資料が聞けるようになっており、全世界どこからでもアクセスができます。音源そのものの著作権が有効なものについては、BnFの建物以外の場所からアクセスしている場合は冒頭30秒が聞け、残りをダウンロードしたい場合は外部サイトを通して購入するようになっていますが、それでもかなりの数の資料が無料でどこからでも全編聞くことが可能です。
さらにBnFは、ガリカにもまだ出ていない資料でデジタル化したデータがほしい場合、個別にデジタル化を頼みデータを購入することができます。図書館にコピーを頼むのと同じで、ページごと、資料の内容ごとに決められた値段を払って、PDFにしてもらったり、それぞれ資料に合わせてデジタル化してもらったりしますが、もちろん作業する時間がかかるので少し待たなければなりません。ほしいデータの内容にもよりますが、古いレコードなどの音源資料で2,3週間かかるそう。専属のスタッフがきちんと作業をします。

ここまでは、主に外側の人から見たBnFの「すごいところ」。
内部に入らなくても、わかる内容です。

本当にすごいのは、ここからです。

まず内部で働いている人たち。
彼らは100%その道のプロで構成されています。図書館司書の資格を持ってます、程度では働けません。どの時代のどの国のどういう資料に詳しくて、それに関する知識なら世界トップ10に入ります、ぐらいの人でなければ務まらない仕事がほとんどです。「1956年に発売された○○社のレコードでこれこれの理由でレア」といっただけでタイトルから演奏家の名前までわかってる情報全部が瞬時に出てくるぐらいで、まぁとりあえず働けるかな、というような世界です。本当に。おまけにBnFのスタッフはオペラ座のバレエダンサー並みの厳しいヒエラルキーがあり、各セクションごとに役割が決められミスない仕事が求められます。これだけの厳しい条件で日々資料に向き合っているアーキビストの方々は、俗な言い方をすればオーラが違う!といった感じで、本当に素敵でした。自分たちの仕事に誇りを持ちつつ、常に自己批判も忘れない姿勢、資料に向き合う真摯なまなざし、どの点を取っても、尊敬できる方々です。

今回私があってお話しをうかがったのは、オーディオヴィジュエル部門のレコード資料を管理するトップの方。ナイスな黄色のシャツを来たエマニュエルさん。
オーディオヴィジュエル部門では、レコードやCD、そしてビデオやDVD、ブルーレイ、さらにはビデオゲームといった新しいメディア全般を取り扱っているそう。書籍にディスクがついているものなどは、マルチメディアという別セクションが管理しているそうですが、オーディオヴィジュエルが現在持っているコレクションは150万点以上。
内部ではさらに、レコード担当、CD以降の電子メディア担当、ビデオなど映像作品担当、とセクションがそれぞれ分かれているそうです。

これらのコレクションは納本制度によってBnFに送られるものもありますが、それ以外にも、納本制度を無視している小規模製作者やリストから漏れる特殊な資料は購入しています。また、公的なオークションやコレクターからの購入、寄贈など通して新たに収蔵する場合も。この収集保管において大事なポイントが、「個人的な趣味判断を入れず、とにかく保存できるものは全部保存する」という基本姿勢です。もちろん、オークションでの購入やコレクターからの購入のシーンでは、予算の使い方を考えて最終的にはどこかで個人の意見が入ってしまうそうですが、基本的に集められるものはすべて集めるというのが鉄則です。

オーディオヴィジュエルのセクションは、種類ごとの分類のほか、さらに、レコード担当の中だけでも、

・資料収集のための買い取りを専門にするスタッフ
・納本制度に従わない小規模プロダクションにアプローチして納本させるべく交渉する専門スタッフ
・収蔵された資料のカタログ化をする専門スタッフ
・収蔵資料のデジタル化を専門にするスタッフ

などなど、役割事に分かれており、さらに例えば買い取り専門スタッフは、その中でも1940年代の録音物を専門に狙うスタッフ、80年代のポップス専門のスタッフ、などそれぞれの得意分野によって担当が分けられているそう。
資料収集の買い取りには、国家予算から毎年決まった金額が割り振られているそうで、その予算も、2段階に分けられ、少額のディスクであれば幾らまではすぐ購入可能、それ以上の金額になった場合、特別予算からさらに追加でここまで購入可能、という形で上限がありつつ、割とフレキシブルに使われている様子でした。もちろんセクションで全体の予算を細分しているので、各担当者は色々と勘定しないといけないのでしょうが、毎年この新規購入で貴重な資料がBnFに入ってきて、アーカイブされます。
もちろん予算にも限りはありますから、納本制度に従わないプロダクションへのアプローチがとても大事で、昨年度交渉スタッフがやり取りしたプロダクション数は1万件以上。21世紀でもレコードを出す会社があるので、この作業は欠かせないそうです。現在、技術の低価格化などで大手の企業でなくても気軽に録音録画物を製作できるようになり小さな個人プロが増えているらしく、対応が大変なほか、ネット上でのみ配布される音楽をどう収集していくかはいまだに決定的な解決策がなくて、対応に追われているそうです。
ちなみにこのネゴシエーターたちが交渉する相手は年間に1万件以上、その後実際に納本してくるのが500件程度とのことで(規模が小さいほどわざわざ納本してくれないケースが多いらしい)、本については厳しい決まりが徹底しているフランスも、録音録画についてはまだ納本の義務が周知されていなかったり、ペナルティーがないため無視するケースがあったりで難しいそうです。
最も大変なのはカタログ化するスタッフで、特に古い録音物などは資料の情報が少なく、カタログに必要な情報が抜けていることが多いそう。手元にあるディスクが何なのか、カタログ化担当のスタッフたちはそれぞれ専門知識を活かして探偵のような調査を続け、アカデミックな視点で見て信頼できる情報を集めてデータベースに入力していきます。これがなければ、研究者は資料を探すことができないので、本当に重要な仕事です。
こうしたスタッフのほか、もちろん、資料の適切な保管のため働くスタッフがいて、資料をデジタル化して保存する作業も進めています。形あるものはいつかは壊れますから、劣化消失の前にデジタル化で最低限情報を残せるものは残さねばなりませんし、デジタル化も、単にコピーして終わり、ではなく、専門的な研究使用に耐えうるハイクオリティーできちんとしたものを遺す必要があります。

私は以前、日本の国会図書館の方とも面会する機会があり、少々特殊な資料の収集や保存について質問をしたことがありました。が、激しくがっかりするような消極的な資料収集の姿勢と、図書館がそれにビビッてどうするんだ、と思わずにはいられない「著作権があるので保存は難しいんです」という謎な返答の繰り返しで、「これもうダメだわ」と思ったことがありました。。。すでにあの時から数年経過しているので、国会図書館も今は変わっている、と願いたいですが、図書館の第一の使命は、資料の永久保存であって、実際影響があるのかどうかもわからない今年の某企業の利益とか、コピー禁止の標語保持ではないはずなのです。。。少なくとも図書館自身の目的が金儲けではいわけですから、資料が万が一の事態で消失する前にきちんとした手を打って保存することは絶対に必要な作業でしょう。

ちなみに日本でよく耳にする「著作権が・・・」の一言ですが、この著作権というアイディアを発明したのはフランス人。その後各国に広まり、今ではすっかり金儲けと利益独占のためのツールに使われていますが、もともとは作品を生み出した作者の権利を守ろう、というものでした。フランスは著作権についての法律がもちろんありますが、研究や文化活動のフィールドを金儲けのフィールドと完全に分けて考えようとする傾向が強い国だと思います(現実はどうあれ)。
BnFのガリカは、ほぼすべての資料を自由にダウンロードして保存できますが、例えばブリティッシュ・ライブラリーのデジタル図書館は閲覧はできてもダウンロードができない仕組みになっていますし、他の図書館のデジタル資料では、まま、本全体のダウンロードができず、指定した1ページごとの画像ダウンロードのみ可能なケースも結構見かけます(もちろんちまちまと1ページずつ全頁をダウンロードすればすべてダウンロードできるのですが、ページ数が多い資料では現実的ではありません)。ガリカでは全頁のダウンロードを選んだ場合、画像の解像度が低くなるので、写本などの本当に細かい部分をきちんと見たいならサイト上のビューアーで見るか、ページごとに画像イメージでダウンロードするしかありませんが、それでもまとめて全頁PDFを取得するチョイスがあるのはとても助かります。たとえばBnFが持ってるマショーの写本群は、どれもPDFですぐに取得可能ですが、このおかげで、中世音楽を専門にする音楽家たちがどれだけ恩恵を受けているか!
高額なファクシミリを買わなくても、自由に写本を見ることができ、おまけに複数のバージョンを比較検討することまで可能。このおかげで、若い音楽家たちはお金がなくてもマショーが演奏できるのです!「ファクシミリを出した会社の著作権が~」と言っていたら、こんなことはできませんが、「写本を書いた人は何百年も前に死んでるから、パブリックドメインです。」の一言でポンとデジタル化してアップしてくれるおかげで、そこから新しい文化が作れます。

私は、音楽家としても、研究者としても、こうしたアーカイブにいつも助けられています。
アーカイブはとても大切。
そしてその資料に誰でもアクセスできることは、本当に大事。
それをずるがしこく使って自分のビジネスにしてしまう人も残念ながら存在しますが、その人たちの一時の利益を上回るだけの豊かな文化活動、それもこの先数百年続き新たな歴史になっていくような文化活動が、この開かれたアーカイブから生まれていきます。

日本では、文化政策というと、どこかのアーティストに自由に使えるお金を投げて、終わり、とか、天下りチックなプロジェクトに予算を積んで何となくその時だけ盛り上がるイベントができて、終わり、というパターンが非常に多い気がします(私の勘違いであってほしいのですが)。
本当に文化を豊かにしたいなら、もちろんそうした新規の投資も有意義ですが、それ以上に、例えば基本となる人の教育のために予算を用意したり、新たな文化活動の発信地となるアーカイブを支援したりするべきだと感じます。
その時一時的にお金を誰かに投げて、そこだけが潤うのではなく、多くの人に機会を与えることで長期的に見て成果が出るような、文化を「育てる」という視点での政策がなければ、文化は根付かないのでは。
文化的な活動や、天才的なアーティストの作品は、ただ単に特定のずば抜けた才能を持つ個人やグループがいたから生まれる、というものではないと思います。もちろん個人の才能も必要ですが、誰が才能を持っているかなんて、わからないのです。
才能を持つ人たちが自然に開花していけるような環境を作ることが、大事で、アーカイヴは、文化的な環境の出発点だと強く思います。

中世の写本を購入しました。

Manuscrit-Brrbiaire

中世の作品を研究する人にとって、写本を読むことは日常的な作業です。
しかしながら、写本を実際に手に取るチャンスはそうそうございません。
大抵は図書館などに、その写本を実際に見る必要があることを説明するレターや研究内容を説明するレジュメを用意し、お願いして、ようやく写本に近づくことができます。

写本が大好きな私。
いつか、どんなものでも構わないから音楽が記譜されてる写本を所有したい、と非常に強く願っておりました。
おりしも12月、クリスマスももうじきです。
パートナーの彼(←世界有数の80年代ゲームとPCのコレクターで意外と有名人)に「絢子、写本が欲しいな~」なんて言っていたわけです。

そしたら、本当に買ってくれちゃいました★

本日のブログのテンションがちょっと高くても、お許しくださいませ。

ひとまず、こちらが購入した写本の全貌です。
購入した写本のPDF

どうやって写本を買ったかと言えば、非常に簡単で、ネットオークションのeBay(日本だとヤフオクみたいなもの)フランスのサイトでManuscritを検索して、これは!と思ったものに入札。
ネットオークションに詳しい方はわかると思いますが、eBayはヤフオクよりも購入者側のセキュリティが守られており、落札後に商品が届かない、だとか、詐欺だったーなんてことがあればしっかりとeBay側が対応してくれるらしく、出品者へのチェックも厳しいらしいです。
私の写本も、落札後すぐに発送され、手元に届きました。

さすがにフランスのeBayでは、ManuscritやCodexで検索をかけると、多種多様な美しい写本が出てきます。お値段はピンキリ。音楽の記された写本もぽつぽつとあります。私が選んだ写本は、その中でも写真で見た感じ非常に古そうに見えた一品です。

実はこの写本を見つける少し前、学校の授業でこれに良く似た写本を扱っており、もしや同時代のもの?ならすごい!と思ったのです。
BnF所蔵の似たようなタイプの写本
文字飾りが似ているBnF所蔵の別の写本
私の写本がもしこれらと同時代のものなら、確実に14世紀より前のものです。

購入した写本はページで数えて4ページ、フォリオで数えると2枚、所謂ビフォリオと呼ばれる二つ折りの羊皮紙に書かれたもの。
あちこちに痛みがあり、状態は完璧ではないものの、記述されている部分は欠損もほぼない、非常にきれいな状態です。
インクは赤、黒、青、そして紫の4色が使われており、青には鉱石を削ったインクが使われています(写真だとなかなかそこまで映らないけれど実物をみるとはっきりわかる)。

書かれているのは、Quinquagesimeの日曜日のLecon des ténèbresと、Sexagesimaの日曜日の同じくLecon des ténèbres。
実はページで数えて2ページ目と3ページ目の間は、内容がつながっていません。
この二つの祝日の間には間違いなく他の曜日があるでしょうし、2ページ目が半端な部分で終わり、3ページ目は途中から始まっていることから、このビフォリオの間には他のビフォリオが挟まって、カイエになっていたことがわかります。

写本には、聖歌の楽譜だけでなく、間に読まれるレクチオ、さらに創世記の一節が記載されています。
ミサではなく聖務日課で歌われる曲が順番に記されていること、またレクチオや創世記の一節まで記載されていることから、このビフォリオが含まれていた元のコデックスの種類はグラデュエルや通常のアンチフォネではなく、bréviaireブレヴィエールとよばれる本であろうと推測されます。

ブレヴィエールは、もともと11世紀ごろから、修道僧らが旅に出る際、旅先でも修道院と同じく聖務日課の祈祷をこなせるように、祈りに必要な文章と聖歌などを日にちごとにまとめて記載した小型のシンプルな本でしたが、旅先に限らずプライベートな祈りを捧げるための本として使われるようになり、最終的には聖歌や祈祷など種類の異なる内容を日付ごとにまとめた便利な本のことをブレヴィエールと呼ぶようになります。

私の写本の大きさは、25.5センチ×31センチとやや大型です。
旅に携帯するには少々かさばりますので、後世に個人的な祈祷の用途で作られたものでしょう。
一般的に写本は小さいほど歴史が古いことが多いので、書かれた内容と合わせて考えても、私の写本は14世紀ごろのものではないかと思っています。

四線譜の各線はところどころ同じ幅で曲がったりしていますから、間違いなくRastrumラストラムと呼ばれる4線を一回でかける道具(特殊なペン先)を使って引かれています。
文字の装飾は15世紀以前のややプリミティヴな雰囲気がありますが、聖歌の文字体などはまま古い時代のものを使うこともあるので、なんとも言えません。四角記譜は非常に整っていますし、書かれたラテン語の内容も、多少単語の前後が変わっているものもありますが正確です。間違いなく当時のプロが丁寧に作ったコデックスでしょう。

余白に上下さかさまに書かれた文字は日付ですが(フランス語)、これは黒インクの質も全く違うことから、明らかに後世の人がこの写本を取得した日付を書いたメモです。

今のところ、どこのどんな写本の一部なのか、これ以上の事はわかりませんが、貴重な中世の遺産、大切に保管し、他の音楽学者らと共有していきたいと思います。

中世音楽研究に役立つリンク集

私が日本で修士号を取った頃(ざっと10年近く前?!)は、Youtubeは今と比べ物にならないほどコンテンツ数が少なく、デジタル化されてる書籍は非常に限られていました。
私の恩師が論文を書いたころはパソコンもなく、修士論文を手書きしていたので、Wordを使ってサクサク文章を書いては添削して修正できる学生たちに「便利になったよねぇ、私たちの時代は大変だったよ」と話していましたが、今はさらに、ネットの普及で信じられないほど研究のスピードが上がっています。
ソルボンヌでも最初の1か月、どの先生の教室に行っても「この分野の研究を進めるのに使えるリンク集と各ページの活用法」が講義の内容のほとんどをしめており、21世紀の研究者に求められる技術はネットの海からいかに研究に使える資料を拾い上げて集められるかだ、と言われます。
もちろん、WikipediaやGoogleの情報をコピペする、なんていうことではなく(これを学問の領域でやったら犯罪行為)、信頼性のあるソースにいかにたどり着くか、ネットを活用していかに研究論文を閲覧するか、といったことをガイダンスで教えられます。

とくに中世の音楽を研究する人にとって、ネットはとても重要です。
例えば13世紀の写本に入っている曲を演奏したいとき、ファクシミリがまだ出版されていなかったり、出版されていても高すぎて手が届かないことがままあります。以前はそこで諦めるか、運が良ければ実際に写本を保管している図書館まで閲覧にいけるかもしれませんが、とにかく大変です。でも現在は、多くの図書館が資料をデジタル化しアクセス可能にしており、正しい検索方法さえしっていれば、資料を自宅のパソコンで見ることができます。
また、探している曲がどの写本に入っているのかわからない、あるいは写本の詳細がわからなくて困っている場合など、私たちの悩みを解決してくれるデータベースも存在します。

日本でこうした中世音楽の研究ツールについて教えている場所があるのかどうか知らないのですが、このページを見る方の中にはリンク集があれば嬉しい、という方もいるかもしれないので、今回は、私が普段使っているサイトなどなど、いくつか主要なものをまとめてみようと思います。

私は普段フランス語で生活しフランス語で研究しているので、基本的にサイトもフランスのものが多いと思いますが、英語のものもあるし、単純な検索であれば特に言語の問題なく使えるものもあります。


写本、楽譜、マニュスクリプトを探す

IMSLP
ご存知の方も多いと思いますが、著作権の切れている作品を中心に大量の楽譜(音源も)が検索できるサイトです。
過去出版された楽譜が多いのですが、バロック、ルネサンスの手稿譜やトランスクリプション、そして一部中世の写本も入っています。たとえば中世をやる人なら必ず一度は演奏するであろうCodex Florenceが全フォリオここでダウンロード可能です。

DIAMM
中世音楽の写本研究に欠かせないサイトDIAMM。無料で登録ができ、中世のポリフォニーを載せたほぼすべての写本を網羅する巨大なデータベースです。もともとポリフォニー音楽のデータベースとして構築されたいきさつからモノディーには弱いですが、アドヴァンスサーチでは曲名や作曲者名から写本を探すことができますし、写本ごとのページには論文等で言及する際の写本の正式名称にあたるコードや、写本に含まれる作品1作品ごとの詳細情報がみれます。外部サイトで写本閲覧可能な場合(図書館資料)にはリンクが付いていますし、このサイト内部で閲覧可能な資料も多数あります。例えばカノニッチ写本はこちらで全ページ閲覧可能です(ただしダウンロード機能がないのでプリントスクリーンでセーヴするしか方法がありません)。

BnF Gallica
ご存知の方も多いかと思いますが、フランス国立図書館運営のデジタルアーカイヴGallica。大量の写本がデジタル化され自由に閲覧できます。もし探している写本がBnFに所蔵されているものなら、高確率でデジタル化されて閲覧可能になっていますし、写本だけでなく出版物も見れ、楽譜の他、音源資料も聞くことができます。PDFなどのファイル形式で保存もしやすいですし、書物も相当数あるので、非常に役立つツールです。

British Library
資料のデジタル化と公開を行っているのはフランスだけではありません。ブリティッシュライブラリー所有の写本も中世音楽の研究には欠かせない資料。こちらも、デジタルアーカイヴで見ることができます。ただしダウンロードができないので、少々不便。

E-Codices
サン・ガル(サンクト・ガレン)の図書館主催のデジタルアーカイヴ。グレゴリオ聖歌を研究する人が避けては通れないサイトです。初期のネウマを記した貴重な写本にアクセスでき、宗教音楽研究に必要な情報を見ることができます。DIAMMはポリフォニーが中心でしたが、ここはモノディーのグレゴリオ聖歌を中心とした重要なサイトです。

Medium
音楽に限らず、中世からルネサンスにかけてのマニュスクリプトを検索できるサイトです。大学図書館などに加盟している人であればお金をかけず資料をGetする道が沢山あるのですが、場合によってそれができないとき、このサイトでは、サイトを通して写本を購入することができます。


お役立ちデータベース


GREGOFACSIMIL
音楽学者ドミニク・ガテが作ったグレゴリオ聖歌のデータベース。先のE-Codicesはサン・ガルの図書館が作ったアーカイヴですが、こちらは国境を越えて聖歌に関するあらゆるマニュスクリプトを網羅した超強力なデータベースです。
特にデータベースExcelファイルこのページの下にあるBase de Manuscritsはネットで閲覧可能な聖歌を集めたデータベースで、時代や立地の異なる写本を網羅しているので、一つの聖歌の異なるヴァージョンを探したい時などに非常に便利。

RISM
中世に関してはまだまだ情報が限られていますが、音楽に関する資料情報をまとめたデータベースです。曲については最初のワンフレーズをトランスクリプトして表示してくれてるものもあります。ちなみにこちらの情報はたまにDIAMMのデータベースにも入っているケースも。

La Trobe
大学が作っている中世音楽のデータベースです。作曲者名その他で検索をすることができ、曲の詳細情報や簡単な参考資料のリストが付いています。DIAMMで万が一見つからない情報があればこちらも試してみて。

Global Chant Database
グレゴリオ聖歌のデータベース・サイト。このサイトの一番の魅力は、「メロディーから聖歌を検索する」という凄い機能があることです。しかも移調に完全対応。ポリフォニーに使われたテノールが聖歌の断片だと思うけどどの曲だったかはっきりしない、そんなときはここに音符を打ち込んで検索。また、聖歌の歌詞ワンフレーズから検索して該当する曲の音符を一覧で表示してくれたりもするので、色々な使い方ができます。

メディエヴァルのリンク集
私がここで紹介したサイトと重複しますが、こちらに使えそうなリンクをまとめたページもあります。(フランス語)


--------------
ご紹介したのは、よく使うサイトだけですが、もちろんフランス語以外のほかの言語に精通している方ならもっとほかにも検索方法があるでしょう。
中世ルネサンスの音楽をやる人は、どんなに良いトランスクリプションを使っていたとしても元のソースを見ないとわからないことが必ずあります。これらのリンクは音楽学者だけではなく、この時代の音楽をやるなら一般の演奏家の皆さんも絶対に必要な情報だと思うので、ぜひ有効に使っていただければと思います。

Profil

辻絢子  (Ayako TSUJI)

Author:辻絢子 (Ayako TSUJI)
フランス在住のソプラノ・ピアニスト・クラヴィシテリウム奏者・音楽学者。パリ・ソルボンヌ大学中世音楽演奏マスター在籍。パリEnsemble Arquémie主催。
中世から現代に至る幅広い時代様式の演奏法と音楽理論を操る歌手、講師として国際的に活躍中。
15世紀以前の作品、とくにアルス・シュブティリオル様式の作品演奏と、13世紀ノートルダム楽派様式の即興演奏を得意とする。
古楽だけではなく現代作品にも関心が高く、日本で大学生&院生だったころは美学芸術学を専攻し音楽に限らずアートや映画、文学など幅広い分野を対象に20世紀以降の作品を研究。
パリでの演奏活動の他、2016年より「中世音楽センター」を立ち上げ、ヨーロッパの現役中世音楽専門家、演奏家と日本の生徒をつなぐ講習会やコンサートを企画している。

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