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コンセルヴァトワールに留学する方法

もうすぐ9月、ここフランスでは長い夏のヴァカンスが終わり新学期が始まる時期です。
コンセルヴァトワールの学生たちはこの時期に、それぞれ希望していた学校の入学試験に登録をします。
昨年度、無事にディプロムをとった私も、もう少し上の学校で勉強を続けたいと思い、今年はいくつか入試を受けてみようと思っているところです。

日本から海外の学校に留学をしたいと思っている方は多いのではないでしょうか?
でも実際に留学する方はまだまだ少数。
財力に恵まれていれば業者に留学の準備を頼んでしまうこともできます。
通っている学校に交換留学の制度があればそれを利用することもできます。
あるいは知り合いに既に留学している人がいれば情報をもらえます。
パリであればエコール・ノルマルなどフランス語能力0でも問題なく自分で入学準備ができてしまう学校もあります。

だけど、資金に限りがあって、さらには知り合いのツテもなく、留学を諦めてしまう人も多いのでは?
あるいは「私なんてそんなレベルじゃないから。。。」といって日本にとどまっている人もいませんか?

フランスのコンセルヴァトワールは年間の学費が高くても5万円程度だったりと、学ぶことそのものは日本から比べるとはるかに安くすみます。年間5万円だと日本なら趣味のピアノ教室も通えないのではないでしょうか?フランスならこの金額で、音楽専門教育をしっかり受けることができます。
今はビザの取得方法も色々あって(学生ビザ、コンクール生ビザ、ワーキングホリデーなど)、留学は難しいことではなくなりました。
戸惑ってないで、思い切って出てしまいましょう!
というわけで今回はフランス、パリへの留学方法について、いくつかお話ししてみようと思います。

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・・・・・・そもそもどうやって留学するの?

留学というと特別なことを考えがちですが、基本は「Inscription(登録)」→「Concours(入試)」→授業開始、留学生活スタート、という3ステップです。留学生だと語学力の証明書類が必要なんじゃないか、とか、紹介状がなくて大丈夫なのか、とか、色々な疑問があるかと思いますが、順序良く準備さえすればそれほど特殊なことは何もなく登録から学生生活スタートまで持ち込めます。ちなみに私自身は今まで一度も語学力の証明書類の提出を求められたことがありませんし、証明書類も有効期限に問題のないパスポートとか、既に現地で生活をはじめたならIDがもらえますのでそのコピー等で済んでいます。特に私が最初のInscription等で問題がないのは、既に小さなコンセルヴァトワールでディプロムを取る等の履歴があるからだと思うのですが、この「小規模なコンセルヴァトワール」というのが個人留学の鍵の一つです。

※その他、夏期講習などStageと呼ばれる短期講習を利用して留学準備をすることもできますが、それはまた別の機会にお話ししましょう。

■効率よい留学準備■
●年齢制限
コンセルヴァトワールには様々な種類がありますが、ほとんどのコンセルヴァトワールが入試の年齢制限を課しています。
これは専攻の種類と学年によって違いますから、自分が入りたい科の年齢制限を確認する必要がありますが、歌や古楽科であれば30歳前後がリミットの場所が多いでしょう。ちなみに学校によっては年齢制限がない場所もあります(ルネサンス音楽で有名なToursのコンセルヴァトワールの週末講座など)。
年齢制限よりも若ければ若いほど、入試には有利になりますから、それも考え、余裕をもった留学プランを立てましょう。
そして、もし年齢制限を過ぎてしまっていたら、諦めるべき?―いいえ、入試は可能な事が多いです。ただとても不利になります。
そう、フランスは人と人のやり取りで制度を融通してくれる柔軟性があります。
もし年齢制限を過ぎていても、コンセルヴァトワールの事務に連絡して熱意を伝えれば、試験を受けられるケースがあります。コンセルヴァトワールのディレクターあてに志望動機の手紙を書く必要があるとか、何か用意しなくてはならない書類が増えるかもしれませんが、試してみる価値はあるでしょう。
ただ年齢制限を過ぎていると、入試の審査員たちは、その生徒を年齢を無視してでも取る意義がある!と全員納得しなければ、入学を許さないケースがほとんどです。入学できる生徒の数には限りがあり、若くて優秀な人がいればそちらを取りたいというのは、わかりますよね。
なので理想はできるだけ若く、余裕があるうちに入試を受けることです。

●生活面
パリの生活費は東京と同じ程度です。もちろん贅沢するか節約するかでも変わります。ですがだいたい東京で暮らすのと同じとイメージしておけば良いと思います。日本人は家の使い方が丁寧ですし、仕事も真面目にするという良い印象がありますから、パリの日本人のコミュニティーの情報サイトなどを使えば、家さがしやバイト探しが日本語でも十分できたりします。シェアルームやホームステイ形式のお部屋を探せば家賃も安めに抑えられます。
よく音楽の学生は家で楽器演奏が可能かどうかを気にしますが、通常、コンセルヴァトワールでは空いている教室を練習室として無料で生徒に貸しており、家での練習ができなくても学校である程度練習時間と場所を確保することができます。もちろん楽器のコンディションや時間にはバラつきがありますが。さらにフランスは日本とは違って近所の物音の捉え方がアバウトなので、特に楽器可能と書いていなくても日中邪魔にならない時間に練習をしても問題にならないことも多かったりします。もちろんご近所さんにもよるので文句が来ることもあるでしょうが、ホームパーティー文化のフランスですから、長時間・大音響ででもなければ「うちも金曜の夜は遅くまでうるさいからね」と多めに見てもらえることもあります。
これらのことを総合して安めの家を探し、しばらくは給料0でも生活ができる分だけの貯金はためておきましょう。

●語学
フランスでの生活にフランス語は必須です(エコール・ノルマルは日本人が多すぎて日本語で生活可能な環境らしいですが・・・)。特にコンセルヴァトワールで勉強するなら、楽器演奏の人でも音楽史やアナリーズ、エクリチュールなどの授業を取らなければならなかったり、基本的に授業は全てフランス語だったりしますので、フランス語で会話する最低限の能力が求められます。ただ、音楽を学ぶことが第一の課題ですから、多少フランス語に難があっても音楽面で才能のある生徒は入学を許され、その後にソルボンヌ等が開いている語学教室に通わさせられたりするそうです。
私自身は完璧でないにしろある程度のフランス語力はあるので問題はありませんでしたが、周囲の留学生を見ていると、それほどフランス語が上手じゃない人でも特に語学教室へ行くよう指示されていることもないようなので、この辺はかなりアバウトだと思います。
なので日本で高いお金を出して語学力向上のために必死でフランス語教室に通い続けるより、ある程度基礎を勉強して日常会話程度はなんとかできるかな、となったら、思い切ってフランスに来てしまった方が良い気がします。その後の上達も早く、お金の無駄にもならなそうです。
もちろん初級フランス語は、ここフランスで生き延びるために必須ですし、試験でも何か質問されて答えられないと不便ですから、そこは日本にいる間に勉強しておきましょう。

★目指す学校より下のレベルの学校を利用して1年留学してみる★
そう、ここがポイント。
1年間、自分が行きたいと思うコンセルヴァトワールよりずっと下のレベルのコンセルヴァトワールに入学して、その1年間で本命の学校の入試の準備をするのです!
フランスのコンセルヴァトワールは日本の音大とはシステムが違うことが沢山あります。そもそもフランスでの生活になれるまでには時間がかかりますし、フランス語が完璧でなければ語学を学ぶ時間も必要です。でも音楽教育に使われる専門用語や言い回しは、実際にフランス人の先生のレッスンで学ぶ方が効率が良くないでしょうか?
フランスのコンセルヴァトワールは、何もCNSMDのようなハイレベルな場所だけではありません。フランスには厳格な学校の序列があって、CNSMDを頂点に格付けされ、無数のコンセルヴァトワールがあるのです。
それぞれの地方、それぞれの区に1つずつ、といった感じで、本当にそこら中にあり、こうした小さなコンセルヴァトワールは将来プロになる若い人たちの育成の他、地域に住む住民たちや子どもたちの音楽教育の場として機能しています。
この小さなコンセルヴァトワールなら、既に日本で音楽教育を受けてきた人(音大であれそれ以外であれ)がストレスを感じず入試を受けられる学校を見つけることができます。申請するビザの種類によってはディプロム取得が必須のこともありますので、その場合は最低限でもDEMと呼ばれる音楽ディプロムを出せる規模の学校を探さねばなりませんが、それでも山ほどの学校があります。パリの中なら各区に1つずつの地区音楽院がありますし、メトロで行ける範囲のパリ郊外まで範囲を広げると山ほど学校が出てきます。
まずこの、入試ストレスのやや少な目な小規模コンセルヴァトワールをいくつか受け、受かった中から自分が通いたい場所を選択、1年間ためしにフランスの音楽教育の場に身を置いてみて言葉と生活スタイル、そして音楽を同時に学んでみるというのは、悪いアイディアではないはずです。
パリであれば、毎日どこかでコンサートがあり、学生になってしまえば美術館なども学生料金があったり、芸術にひたった1年を過ごすことはきっと音楽家にとって大きなプラスになるでしょう。また、1年の間に今後自分が師事したい先生と直接やり取りをしておくことができます。
フランスは人と人の直接のやり取りがとても強い国。
日本のコネ文化ではないですが、コネクションがあることは非常に大きなプラスになります。
また、その小さな地方のコンセルヴァトワールで何かしらの学位を取得しておくと、次の年の受験で、最低限音楽の勉強をするのに必要なフランス語はできるんだな、という証拠になり、DELF等に高いお金を払って中途半端な点数を出すより有効確実簡単です。

■登録■
①Inscriptionの情報チェック
CNSMDは試験が夏前からはじまるため登録も早いです。もしCNSMDを受験するのであれば、秋ごろからこまめに学校のHPを見て情報を収集しておき、入試のDossier(登録用のフォーム)が出ていないか確認しましょう。
それ以外のコンセルヴァトワールはだいたいパリ及びパリ近郊は9月に試験があります。早いところは6月に、それ以外は7月中旬にDossierが出ます。
注意しなければならないのは、7月から8月にかけてのヴァカンスです。ヴァカンスの間、コンセルヴァトワールは事務も含めて完全な無人になる可能性が極めて高いです。もしDossierや受験についての質問があっても8月中は問い合わせの電話をしても誰もでないです。
なので、初留学で受験を考えている学校があるなら、6月中には一度メールや電話などで、来季の受験を受けたいけどDossierはいつ出るのか、またネット上でダウンロードできるのか、日本国籍だけど特別必要な書類などあるか、を問い合わせておいた方が良いでしょう。
電話は日本からだと時差のこともあり、フランス語のやり取りになれていないとわからないこともあるでしょうから、フランス語の先生に手伝ってもらってでもメールでやり取りをしておくと安心。
②書類送付
Dossierが出たら、期日までに必要書類をそろえてコンセルヴァトワールに送る必要があります。
最近はメールで画像添付にて送れる学校もあったりしますが、そうでなければ郵送です。
学校によって必要書類は異なり、身分証のコピーも必要なところがほとんどですが、場合によっては本当にDossierの書類だけで良いところもあったり、また、受験料の小切手が必要なところもあります。
小切手はフランスに銀行口座を持っていたりすると問題なくすぐに作れますが、そうでなければ少し苦労しますね。
だいたいの学校が学校の窓口で現金精算してその領収書を張り付けるのでもOKとなっていますが、それも現地に住んでいないとできないこと。
私は渡仏前に小切手が必要になった時には、フランス人の友人に立替えてもらって友人の小切手で送りました。
もしフランスに知人がいない等で本当に困った時は、早めにコンセルヴァトワールに連絡して事情を説明しましょう。
繰り返しになりますが7月末から8月いっぱいは、どこも閉まっている可能性が高いですから、こういったやり取りはできる限り急いでやること。
③伴奏者
たいがいの試験には、学校の伴奏者がついており、当日、試験会場で伴奏者に楽譜を渡して伴奏してもらいます。この場合、伴奏者は完全な初見です。当然アンサンブルが乱れることもありますから、伴奏に左右されず自分の演奏を貫く技が必要です。また、事前に伴奏用楽譜の提出を求めてくる学校もたくさんあります。この場合は初見ではないのですが、学校によって、リハーサルさせてもらえるところと、初顔合わせで試験になるところがあります。リハーサルがある場合は30分から1時間程度、ピアニストに予約をして合わせをしてもらうケースが多く、合わせの料金はコンセルヴァトワールが払う場合と、受験生側が払うケースがあります。有料の場合は1時間で30ユーロ以下ぐらいでしょうか。
自分で伴奏者を連れていくことも可能なので、フランスで試験伴奏してくれる伴奏者がいるなら、試験に連れていくのがベスト。
試験を良コンディションで受けるためにも、またこうしたリハーサルの可能性も考えて、試験前の渡仏の時期は十分余裕を持って日本を出るようにしたほうが良いかもしれません。

■入試■
①専攻科目試験
試験は通常、専攻(楽器なら楽器の演奏、歌なら歌唱、作曲なら作曲、アナリーズならアナリーズ)の試験と、ソルフェージュの試験の2つです。
事前に試験曲の指定があることもあります。
指定がなく完全に自由と言われていても、だいたい他の学校が一般的に課題にするような曲目を持っていくことがほとんどで、あまりに簡単すぎず、極端に難しいものでもない、適度に能力を見せる作品を選ぶように生徒側も配慮します。
たとえば声楽専攻でDEM(Cycle Specialise)のコースを受験する場合、特に曲目指定がなくても、指定時間内(つまり短め)で3曲、3か国語で歌い、1曲はカンタータやオペラのアリアを入れ、うち1曲はフランス語のものを歌います。
フランス語はよほどのフランス語力と発音能力がなければ、どう頑張っても他のフランス人より劣りますから、フランス語の曲を選択するときは発音に難があることを考慮して選曲しますし、できればフランス語ネイティヴの声楽教師と勉強しておくべきです。
また私は必ず日本語を1曲いれるようにしています。日本語の歌を歌える歌手は少ないことと、珍しもの好きのフランス人の性格から、日本語の作品を1個入れておくだけで、試験の時に「あ!日本のものが聴けるの?楽しみだ♪」といったポジティヴな反応をもらえることがほとんどです。
②口頭試問
さて、特に小さい規模のコンセルヴァトワール(CRDなどの地方・地区のコンセルヴァトワール)では、専攻楽器の演奏の前後に簡単な口頭試問があることがほとんどです。審査員、つまりそのコンセルヴァトワールの先生たちですが、彼らから質問をされ、答えます。「なぜうちに入りたいの?」「これまでどこで勉強してきたの?」などなど通常のやり取りをします。
つまり、最低限の語学力があるかどうかがこのやり取りでわかるわけです。
楽器演奏で十分な魅力を伝えられていれば、多少の語学の難点は多めに見てもらえますが、何にしろ大事なのは笑顔と熱意を見せること。審査員にやる気のある元気で良い感じの生徒、と思ってもらえることが大事です。
言葉に難があれば、これからそれを勉強したいんだ、ということも伝えましょう。
試験対策に、最低限のフランス語力をつけておくことと(初級フランス語は日本で勉強しておくこと)、受験するコンセルヴァトワールごとに、その学校に入りたい理由、自己紹介、これから何を学びたいか、といったことを準備するのが賢明。これは口頭試問というよりは、インタビューみたいなもので、リラックスした雰囲気でやり取りするので、言葉に自信がないときはある程度単語等書き留めたメモを用意しておくのも良いかもしれません。紙をみていてもいいから、とにかく伝えたいことがあることをアピールできたほうが良いです。
③ソルフェージュ
ソルフェージュの試験は専攻の試験とは別に準備されており、また、歌手には歌手用のソルフェージュの試験があったりしますから、専攻楽器や受ける科によって内容は異なる可能性が高いです。学校によって試験内容は色々ですが、基本的には初見視唱でしょう。あと、日本にあるかどうかわかりませんが、書かれた音符の音名をリズム通り読んでいくという試験をやることもあります(音程のない初見視唱みたいなものでだいたい歌唱が不可能な幅広い音域のメロディです)。これらの初見は音部記号が複数無秩序に混ざったものが出ることが多いと思います。メロディの途中で突然ト音記号からハ音記号になったり、アルト記号からソプラノ記号に変わったり等。試験対策以前にこうした譜読みの能力は大事なので、ぜひ早めに準備をしておきたいところです。

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このように、留学は最低限のフランス語力があれば可能ですし、受験そのものは、渡航ビザの申請よりはずっと簡単です。
日本にいてフランス音楽に憧れて演奏しているのと、実際にフランス語に囲まれて生活し、フランスの教師陣に教えてもらって演奏するのでは、想像する以上の大きな違いがあります。
日本とは少し違うフランスの教育システムを見るのも面白いもの。
留学の夢を持っている人は、ぜひ臆せずチャレンジしてみてくださいね!
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Profil

辻絢子  (Ayako TSUJI)

Author:辻絢子 (Ayako TSUJI)
フランス在住のソプラノ・ピアニスト・クラヴィシテリウム奏者・音楽学者。パリ・ソルボンヌ大学中世音楽演奏マスター在籍。パリEnsemble Arquémie主催。
中世から現代に至る幅広い時代様式の演奏法と音楽理論を操る歌手、講師として国際的に活躍中。
15世紀以前の作品、とくにアルス・シュブティリオル様式の作品演奏と、13世紀ノートルダム楽派様式の即興演奏を得意とする。
古楽だけではなく現代作品にも関心が高く、日本で大学生&院生だったころは美学芸術学を専攻し音楽に限らずアートや映画、文学など幅広い分野を対象に20世紀以降の作品を研究。
パリでの演奏活動の他、2016年より「中世音楽センター」を立ち上げ、ヨーロッパの現役中世音楽専門家、演奏家と日本の生徒をつなぐ講習会やコンサートを企画している。

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