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イネガルについて①

フランスもののレパートリーをやるなら、絶対に必要な知識の一つ、イネガル。
これについて、文章での説明を何度も試みたのですが・・・


すみません!無理でした!(笑)

なので、文章ではなくビデオをとっちゃおう、というわけで、ビデオにて一部ご説明しますね。

問題のビデオがこちら ↓↓
フランス古楽声楽講座①【イネガル】



どうやら日本語Wikipediaによると、

「イネガル奏法(イネガルそうほう、仏: notes inégales)とは、バロック音楽および古典派音楽の時代に行われていた演奏手法である。記譜上では均等に書かれている2音の長さの一方を長く、一方を短く演奏する奏法である(inégalesとは「不均等な」という形容詞)。単純な装飾法の一形式であり、簡素で角ばったリズム形に、優雅さや趣、ときには力強さを与える。この奏法は17世紀から18世紀にかけてフランスで確立し、また他のヨーロッパの国々にも浸透していった」そう。

でも、私がフランス国内で古楽を勉強しているとき、この説明通りの説明を先生からされたことは一度もありません。
「そこは当然イネガルで歌うのよ!」
なんて言われることがあっても、それは一方を長くして片方を短く歌ってと言っているのではなく、言葉に合わせて音楽の抑揚をかえて!と言われているのです。
もちろん、結果として一方が長く、一方が短く、というリズムの変更がおこるわけですが、これは装飾法というよりは、演奏表現の根源的な「癖」の一種だととらえておくと間違えがないんじゃないかなと思います。

フランス人はフランス語の表現にとても敏感です。
そして中世、ルネサンスと音楽の流れを見ていくと、器楽曲として書かれている作品に声楽の原作(ようするに元ネタとなる歌ですね)がある例はたくさんありますね。はっきりとしたイネガルは確かに初期バロック以降の作品に顕著な奏法ですが、そもそものリズム記譜の曖昧だった中世、そして自由な歌詞表現がたっぷり織り込まれたルネサンス作品でも、バロックほど大げさではなくても、イネガルに歌うことが多々あります。
少なくとも、フランス人たちとアンサンブルを組んでいると、言われなくても多少音楽を詩に合わせて融通している、ということが多々あるのです。
こうした声楽作品をもとにしている器楽曲を演奏するときは、当然に楽器演奏者たちも歌手が行う歌詞表現に合わせたイネガルな演奏法をそのまま楽器にも適用しますし、そうした歌手をまねたイネガルな演奏を日常的に行うフランス語話者たちは、元ネタが歌ではなく、純粋に器楽作品として書かれた作品でも同様の、語るような音楽表現を実践するわけです。
実際、こうした音楽表現のやり方はバロックに限らず、実は近現代のフランス歌曲にもありますし、ピアノ作品などの後世の器楽作にも、書かれていないけれど日常的にフランス語をしゃべっていると自然に理解される抑揚やフレージングが見えてくるときがあります。

「イネガル」なんて言葉にまとめると、何かとても特殊なことのように思えますが、実はフランス語を話す人たちにとっては、言葉の抑揚がそのまま音楽にも浸透しているだけであって、特別なことでもなんでもないんです。
逆に言えば、これはフランス語話者にしかわからないことの一つでもあるのかも。イネガルを含めたフランスの音楽表現を学ぶには、フランス語に囲まれ、フランス語話者が演奏する良い音楽をたくさん聞き、フランス人の先生から学んでいくのが一番の近道ですね。

語るように歌う、というのが、フランスの音楽づくりの基本。
理論で割り切れない微妙な操作こそが、フランスもののレパートリーの魅力だと思います。
イネガルを勉強しておくと、きっと、時代様式に関係なく、音楽の表現法が変わっていくはずです♪
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コメント

器楽の場合

ビデオ拝見しました。歌詞が重要な役割をするということがわかりました。
歌詞の無い器楽曲の場合のイネガルはやはり不均等な刻みを整然と続けるしか無いのでしょうか。

Re: 器楽の場合

器楽曲の場合、元ネタになる音楽に歌詞がついてなかったかをチェックして、もし歌詞があったらそれに合わせます。
器楽のために書かれた曲であっても、歌を歌うときと同じように音楽を作りますから、適当に揺らすとか、付点リズムにする、というのとは体感として微妙に異なります。
リコーダーなどの楽器演奏家とよくアンサンブルをしますが、彼らはフランス語歌詞のつく作品をたくさん演奏しているので、歌詞なし作品でも、フランス語の抑揚に近い演奏を自然としているようです。

No title

回答ありがとうございました。
>彼らはフランス語歌詞のつく作品をたくさん演奏しているので、歌詞なし作品でも、フランス語の抑揚に近い演奏を自然としているようです。
なんか絶望的な感じになってきました。フランス語を自在に操れないとだめなんですね。
そういえば、レッスンで、勝手なアクセントをつけず、平坦にしなければならないところをずいぶん指摘されました。
レッスンで解決していくしか無いのかもしれませんね。
ありがとうございました。

No title

音楽に限らず、文化を学ぶ際、同時にその地方の言語を学ぶことは必須だと思います。
日常の人々のちょっとした考え方から、哲学的な思考まで、あらゆる面に言葉の癖のようなものが関わってきますから、もしフランスの音楽に興味があるなら、同時にフランス語を勉強することはとても大事です。
難しいようなら、歌手とのアンサンブルをたくさん経験するか、「元ネタが歌」の作品を、フランス語をきちんと話している歌手の演奏を聞きながら勉強すると良いかもしれないですね。
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Profil

辻絢子  (Ayako TSUJI)

Author:辻絢子 (Ayako TSUJI)
フランス在住のソプラノ・ピアニスト・クラヴィシテリウム奏者・音楽学者。パリ・ソルボンヌ大学中世音楽演奏マスター在籍。パリEnsemble Arquémie主催。
中世から現代に至る幅広い時代様式の演奏法と音楽理論を操る歌手、講師として国際的に活躍中。
15世紀以前の作品、とくにアルス・シュブティリオル様式の作品演奏と、13世紀ノートルダム楽派様式の即興演奏を得意とする。
古楽だけではなく現代作品にも関心が高く、日本で大学生&院生だったころは美学芸術学を専攻し音楽に限らずアートや映画、文学など幅広い分野を対象に20世紀以降の作品を研究。
パリでの演奏活動の他、2016年より「中世音楽センター」を立ち上げ、ヨーロッパの現役中世音楽専門家、演奏家と日本の生徒をつなぐ講習会やコンサートを企画している。

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