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中世音楽講座2016サマー!!

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夏のヴァカンスが近づいて参りました。
7月の帰国が決定しましたので、噂の中世音楽講座を行います。

参加登録はこちらから!

■《ノートルダム楽派のオルガヌム講座》
  7月13日(水)19時30~21時/7月27日(水)19時30~21時
  両日参加3000円(1日のみ2000円)
■《マショーを歌う》
  7月15日(金)19時30~21時/7月29日(金)19時30~21時
  両日参加3000円(1日のみ2000円)
■《写本読解と音楽表現レクチャー&コンサート》
  7月22日(金)17時・コンサート19時半開演
  お一人様2000円(コンサートのみ聴きに来られる方も2000円でお願いいたします)

すべて会場は東急旗の台駅徒歩6分、便利で美しく素晴らしい音響の「えびらホール」です。
そして7月22日のコンサートは、歌うのは私です。
オール・モノディー・プログラム、当たり前ですが全曲写本での歌唱になります。

前回講座を開いた際、特にアマチュアの方から「自分のレベルではついていけないかも」とのご相談を何件も受けました。皆さまご安心ください。中世音楽に関する限り、世界でもこれをプロとしてやっている人の数は限られており、ほとんど全員がアマチュアです。ソルフェージュに自信のない方などもいらっしゃると思いますが、適宜私がフォローを入れながら指導いたしますのでご心配なさらず奮ってご参加ください

以下、各講座詳細です。

◆《ノートルダム楽派のオルガヌム講座》◆
恒例のノートルダム楽派の様式によるオルガヌムの読譜と即興の講座です。
今回は2日間に分け、1日目は自力で写本読解ができるようになるための基礎力養成、2日目が即興オルガヌムの実力養成に重点を置いた内容となります。両日ともに関連しあう内容なので連続して受講されることをおすすめいたしますが、それぞれ別の内容ですので1日のみの参加も歓迎です。
【日程】2016年7月13日(水19時30~21時/ 2016年7月27日(水)19時30~21時

◆《マショーを歌う》◆
アルス・ノヴァの重要作曲家ギヨーム・ド・マショーを、当時の写本で読譜し歌唱する講座です。
1日目はアルス・ノヴァの記譜法の基礎を確認し、モノディー歌曲を中心に歌詞の配置やムジカ・フィクタを考えながら実際の演奏をしてみる講座、2日目は多声作品を取り上げ、写本に基づく音楽表現の仕方について実践的に学ぶ内容です。
【日程】2016年7月15日(金)19時30~21時/ 2016年7月29日(金)19時30~21時

◆《写本読解と音楽表現レクチャー&コンサート》◆
中世音楽をやる上で、なぜ写本を読むことが重要なのか、記譜法が演奏表現に与える影響に焦点を当てたミニ講座とコンサートのセット企画です。
9世紀から15世紀初頭(アルス・シュブティリオル)までの写本群を見ながら、モダン譜と何が違うのか、なぜよりよい演奏に写本が必要なのか具体的に解説。
19時半からは講師の辻絢子による完全ソロのプチコンサート。写本と声1つで複数の様式を歌いわけるオール・モノディー・プログラムです。
コンサートだけのご来場もOK、ぜひお越しください。
【日程】2016年7月22日(金)17h-19h 講座 19h30 コンサート


この夏、あなたの音楽観を根本から変える刺激的な体験となる良い講座が開けるよう頑張ります。
既に4月に講座を体験した方には更なる実践の場となりますので、ぜひ奮ってご参加ください


参加登録はこちらから!

コンサートのみ聴きに来られる方も、必ず↑このフォーム↑より、ご予約をお願いいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。

オルガヌム即興講習会終了

4月22日金曜日に開催したノートルダム楽派様式のオルガヌム即興講座、無事に終了いたしました。
総勢12名の生徒さんに恵まれ、6時間の長丁場でしたがかなり濃い内容の講座ができたと思います。
今回の講座の内容は大まかに以下のような流れでした。

1.ノートルダム楽派に至るまでの記譜と対位法規則の変遷ダイジェスト版
2.バチカン式の対旋律作曲法実践
3.ノートルダム楽派の様式についての簡単な説明
4.ノートルダム楽派の記譜法解説
5.フィレンツェ写本読譜
6.同じスタイルでオルガヌム即興実践

難しい内容を6時間に詰め込む講座でしたが、最後にはクラウズラの即興もできて、受講生の皆さんのレベルの高さ、非常に印象的でした。全体的にフランスの生徒らに比べ対位法の理解が早いと思います。おそらく記譜法読解も少し続けてやれば皆さん問題なく読めるようになるでしょう。
中世音楽は日本からすれば、いわば異文化の失われた音楽ですが、コンテクストによって読み方が変わる記譜法など、ある意味日本語に似ている部分もありますから、もしかしたら親しみやすいのかもしれません。

文句のつけようがない美しい対位法で即興を展開していらっしゃる生徒さんも何名もいらっしゃいましたが、個人的には、当時の規則に従いながら歌唱不可能なほど前衛的な対旋律を書いてくる方とか、声明と聞きまごう民族色豊かな即興を展開される方などの強烈な個性を出してくるタイプの受講生の方々が面白かったです。
中世音楽の醍醐味の一つは「何をやっても完全に間違いともいえない」という点。誰も13世紀のヨーロッパを見てきたわけではないので、イマジネーション豊かに思い切って表現してみるのはとても良いと思います。
いくら学識豊かに研究しても、当時と全く同じ演奏を再現することは不可能です。それならば21世紀らしく行けるとこまで行ってみよう、という思い切りの良さは聞いていてすがすがしいですね。

中世音楽について学ぶ機会は日本国内ではまだまだ限られていると思います。
でも、中世音楽をやるなら理論の理解や様式についての勉強、記譜法の読解は必須です。
ヨーロッパのアンサンブルがやっている音楽のうわべを真似するだけでは、一聴してそれがばれてしまうもの。
本当に内部から理解して自分たちの個性的な演奏を組み立てていけるよう、今後も機会があればこうした講習会を日本国内で組めればと思います。

ご参加いただいた皆様、お疲れ様でした!
Bonne continuation !!

ノートルダム様式のオルガヌム講習の聴講生受け付けます

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4月22日(金)13時から19時まで、
東急旗の台駅徒歩6分「えびらホール」で開催いたします

ノートルダム様式のオルガヌム講習会

現在、参加希望者人数が上限に達しましたので、受講生のお申し込みは締め切らせていただいております。
もしも興味があって参加したい方がいらっしゃったら、
1500円にて聴講生の受付をいたします。

こちらのフォームより、ご予約をお願いいたします。
聴講予約フォーム

聴講は16時からの参加も可能ですが、料金は一律1500円です。
講習で使用するテクストと会場地図をメールにてお送りしますので、お越しになる際は必ずフォームよりご予約をお願いいたします。

BnFのアーキビストたち

皆さんはアーキビストという単語をご存じですか?
アーキビスト、つまりアーカイブに携わる専門の知識を持った人々ですが、先週、ソルボンヌの授業の一環でBnF、つまりフランス国立図書館のアーキビストと面会をしたので、今日は少し、BnFについて書いてみようと思います。

フランスは言わずと知れた文化大国です。ルーブル美術館の年間入場者数は約9,260,000人、ダントツの世界一位をキープしており、昨年2015年度の文化予算は34,280,000,000ユーロ、日本円で約4,640 億円。これは国家予算全体の0.87%です。こう聞くと少ないような気がしますが、例えば日本の文化予算は国家予算全体の0.11%、ドイツやアメリカなど他の国々と比較してみてもフランスが文化にあてる予算は決して少なくはないどころか、非常に大きい割合です。
フランスにとって文化は、軍事や産業同様、国の重要なパワーです。フランスが文化的に豊かであればあるほど、その影響力は拡大し、経済的に優位に立て、観光客も集まり、強い国が築ける、というロジックです。ある意味で文化的な植民地主義ともとらえ得るでしょうが、とにかくフランスは攻めの姿勢で文化政策を行っています。

例えば教育。日本では美術や音楽は「情操教育」などと呼ばれて、とくに初等教育ではあまり理論的な取り組みがされていませんが、フランスでは、文化が社会にどんな影響を与えるのか骨の髄まで浸透する勢いで、歴史的役割から現代社会でのインパクトまで幼いころから知的に教育します。さらに、新たな世代が次なる文化を生むのに必要な資料、情報、器材に自由にアクセスできるよう、国家予算を使って根本的な学費などかなりサポートをするので、学生は美術館、映画館、コンサートなどで大幅な割引が受けられますし、音楽学校や美術学校などの学費は日本では想像ができないほど少額に設定されます。

教育と、次世代を支える動き、この両方にとって重要なのが、アーカイヴの存在です。

ルーブルには380,000点以上の美術品がアーカイヴされていますが、オルセーやポンピドゥーなどフランス国内の美術館それぞれを合わせた全アーカイヴの数を想像してみてください。宇宙的な数の文化的蓄積がフランス国内に集まっています。フランスで学生になるだけで、このコレクションが格安でいつでも見られる。これが、フランスのパワーです。美術館博物館、そして図書館といった形でより多くの人にアーカイヴが開かれ研究や創作がそこから発展すれば、文化はさらに豊かになっていきます。政府はそれ相応の予算を使って、文化的活動の活性化のため、アーカイヴの維持とさらなる発展充実を促しています(もちろん最近はその勢いが落ちてダメなところもあるという批判もたくさんありますが)。

こんなフランスが国家予算でがっちり支えている巨大アーカイブの一つが、BnFです。

BnFはいわずと知れたフランス国内最大の図書館で、所蔵しているのは印刷物、写本、手稿、浮世絵を含む版画などの絵画作品、レコードやCD、DVD、ブルーレイ、マルチメディア、などなど、点数にして4千万以上の所蔵品を管理しています。この4千万は、レフェランスの数で、実際の資料は手稿など1点ものを除いて納本制度により基本的に最低2部は保管しているので、倍以上の数字になります。
日本では国会図書館に納本をしなくてもISBNコードが出て一般的な販売が可能ですが、フランスは法律でかなり管理がされていて、BnFに最低2部の納本をしないと、書籍の出版ができない決まりになっています。さらにCDやDVDなどにも同じように納品の義務が課されており、年ごとに新しい出版物がありますからアーカイヴの数は増え続けています。

図書館は、現在、ベルシー地区トルビアックにある最新のBnFの建物のほか、リシュリューの分館やオペラ座の図書館など、複数の別館がありますが、今回私が訪問したのはベルシーのメインのBnFの内部でした。

ベルシー地区は最近再開発が進み、こじゃれた店や映画館、シネマテークが並ぶ楽しい地域になりましたが、BnFの建物はその中でもかなりの威圧感がある信じられないぐらい巨大な建物です。建物、というより、町の1区画丸ごと図書館に使った、と言って良い広さで、外側に見えている4棟の巨大なガラス張りのビルは氷山の一角、実際にはその地下に信じられないほど広大なスペースがあって、宇宙的規模のアーカイヴが広がっています。
平凡なパリ観光に飽きた海外旅行上級者なら、ぜひ、セーヌ対岸のベルシーのサーカス博物館サーカス博物館と合わせて、見に行ってほしい場所です。

地下のアーカイヴは、研究者のために開かれており、中に入りたい人は、BnFの入場パスを購入して予約を入れ、中に入ります。
「庭の階」と呼ばれる半地下のような資料閲覧スペースに入る入口は、パスを使ってゲートを開けなければならないのですが「地獄の門」という愛称がついており、一歩ゲートをくぐると、外から見えないその内部に、まさにダンテの地獄下りのようなちょっと不思議なスペースが広がっています。

さて、BnFはアーカイヴ数があまりに多く、あまりに広大なため、突然図書館に行って受付で「この資料を出してください」といっても、すぐには見れません。資料にもよりますが、複数の所蔵があって一般人が自由に閲覧できる通常の本で、手元に本を持ってきてもらうまで早くてもだいたい1時間ほどかかるそう。現在は、ウェブで資料の事前予約ができ、このシステムを使えば、予約しておいた時間に資料を用意しておいてもらえ、閲覧のための机もキープしておいてもらえます。
資料が貴重な写本などの場合は、研究内容を伝え予約をすると、専用の部屋に資料を用意してもらえますし、その場で写真撮影も可能です。
さらに、現在、Gallicaガリカと呼ばれるシステムで、BnFの資料の一部がデジタル化されて誰でも自由に閲覧ができます。ここには300万点以上の資料がアップされており、図書だけでなく、マニュスクリ、版画や手稿、そして音源資料(古いレコードなど)が入っています。音源資料はレコードの写真が見れるだけではなく、もちろん、音を聞くことができます。2014年の時点で3500件以上の音源資料がアップされていますが、現在はさらにBnFパートナリアと呼ばれる外部機関を通してさらに多くの資料が聞けるようになっており、全世界どこからでもアクセスができます。音源そのものの著作権が有効なものについては、BnFの建物以外の場所からアクセスしている場合は冒頭30秒が聞け、残りをダウンロードしたい場合は外部サイトを通して購入するようになっていますが、それでもかなりの数の資料が無料でどこからでも全編聞くことが可能です。
さらにBnFは、ガリカにもまだ出ていない資料でデジタル化したデータがほしい場合、個別にデジタル化を頼みデータを購入することができます。図書館にコピーを頼むのと同じで、ページごと、資料の内容ごとに決められた値段を払って、PDFにしてもらったり、それぞれ資料に合わせてデジタル化してもらったりしますが、もちろん作業する時間がかかるので少し待たなければなりません。ほしいデータの内容にもよりますが、古いレコードなどの音源資料で2,3週間かかるそう。専属のスタッフがきちんと作業をします。

ここまでは、主に外側の人から見たBnFの「すごいところ」。
内部に入らなくても、わかる内容です。

本当にすごいのは、ここからです。

まず内部で働いている人たち。
彼らは100%その道のプロで構成されています。図書館司書の資格を持ってます、程度では働けません。どの時代のどの国のどういう資料に詳しくて、それに関する知識なら世界トップ10に入ります、ぐらいの人でなければ務まらない仕事がほとんどです。「1956年に発売された○○社のレコードでこれこれの理由でレア」といっただけでタイトルから演奏家の名前までわかってる情報全部が瞬時に出てくるぐらいで、まぁとりあえず働けるかな、というような世界です。本当に。おまけにBnFのスタッフはオペラ座のバレエダンサー並みの厳しいヒエラルキーがあり、各セクションごとに役割が決められミスない仕事が求められます。これだけの厳しい条件で日々資料に向き合っているアーキビストの方々は、俗な言い方をすればオーラが違う!といった感じで、本当に素敵でした。自分たちの仕事に誇りを持ちつつ、常に自己批判も忘れない姿勢、資料に向き合う真摯なまなざし、どの点を取っても、尊敬できる方々です。

今回私があってお話しをうかがったのは、オーディオヴィジュエル部門のレコード資料を管理するトップの方。ナイスな黄色のシャツを来たエマニュエルさん。
オーディオヴィジュエル部門では、レコードやCD、そしてビデオやDVD、ブルーレイ、さらにはビデオゲームといった新しいメディア全般を取り扱っているそう。書籍にディスクがついているものなどは、マルチメディアという別セクションが管理しているそうですが、オーディオヴィジュエルが現在持っているコレクションは150万点以上。
内部ではさらに、レコード担当、CD以降の電子メディア担当、ビデオなど映像作品担当、とセクションがそれぞれ分かれているそうです。

これらのコレクションは納本制度によってBnFに送られるものもありますが、それ以外にも、納本制度を無視している小規模製作者やリストから漏れる特殊な資料は購入しています。また、公的なオークションやコレクターからの購入、寄贈など通して新たに収蔵する場合も。この収集保管において大事なポイントが、「個人的な趣味判断を入れず、とにかく保存できるものは全部保存する」という基本姿勢です。もちろん、オークションでの購入やコレクターからの購入のシーンでは、予算の使い方を考えて最終的にはどこかで個人の意見が入ってしまうそうですが、基本的に集められるものはすべて集めるというのが鉄則です。

オーディオヴィジュエルのセクションは、種類ごとの分類のほか、さらに、レコード担当の中だけでも、

・資料収集のための買い取りを専門にするスタッフ
・納本制度に従わない小規模プロダクションにアプローチして納本させるべく交渉する専門スタッフ
・収蔵された資料のカタログ化をする専門スタッフ
・収蔵資料のデジタル化を専門にするスタッフ

などなど、役割事に分かれており、さらに例えば買い取り専門スタッフは、その中でも1940年代の録音物を専門に狙うスタッフ、80年代のポップス専門のスタッフ、などそれぞれの得意分野によって担当が分けられているそう。
資料収集の買い取りには、国家予算から毎年決まった金額が割り振られているそうで、その予算も、2段階に分けられ、少額のディスクであれば幾らまではすぐ購入可能、それ以上の金額になった場合、特別予算からさらに追加でここまで購入可能、という形で上限がありつつ、割とフレキシブルに使われている様子でした。もちろんセクションで全体の予算を細分しているので、各担当者は色々と勘定しないといけないのでしょうが、毎年この新規購入で貴重な資料がBnFに入ってきて、アーカイブされます。
もちろん予算にも限りはありますから、納本制度に従わないプロダクションへのアプローチがとても大事で、昨年度交渉スタッフがやり取りしたプロダクション数は1万件以上。21世紀でもレコードを出す会社があるので、この作業は欠かせないそうです。現在、技術の低価格化などで大手の企業でなくても気軽に録音録画物を製作できるようになり小さな個人プロが増えているらしく、対応が大変なほか、ネット上でのみ配布される音楽をどう収集していくかはいまだに決定的な解決策がなくて、対応に追われているそうです。
ちなみにこのネゴシエーターたちが交渉する相手は年間に1万件以上、その後実際に納本してくるのが500件程度とのことで(規模が小さいほどわざわざ納本してくれないケースが多いらしい)、本については厳しい決まりが徹底しているフランスも、録音録画についてはまだ納本の義務が周知されていなかったり、ペナルティーがないため無視するケースがあったりで難しいそうです。
最も大変なのはカタログ化するスタッフで、特に古い録音物などは資料の情報が少なく、カタログに必要な情報が抜けていることが多いそう。手元にあるディスクが何なのか、カタログ化担当のスタッフたちはそれぞれ専門知識を活かして探偵のような調査を続け、アカデミックな視点で見て信頼できる情報を集めてデータベースに入力していきます。これがなければ、研究者は資料を探すことができないので、本当に重要な仕事です。
こうしたスタッフのほか、もちろん、資料の適切な保管のため働くスタッフがいて、資料をデジタル化して保存する作業も進めています。形あるものはいつかは壊れますから、劣化消失の前にデジタル化で最低限情報を残せるものは残さねばなりませんし、デジタル化も、単にコピーして終わり、ではなく、専門的な研究使用に耐えうるハイクオリティーできちんとしたものを遺す必要があります。

私は以前、日本の国会図書館の方とも面会する機会があり、少々特殊な資料の収集や保存について質問をしたことがありました。が、激しくがっかりするような消極的な資料収集の姿勢と、図書館がそれにビビッてどうするんだ、と思わずにはいられない「著作権があるので保存は難しいんです」という謎な返答の繰り返しで、「これもうダメだわ」と思ったことがありました。。。すでにあの時から数年経過しているので、国会図書館も今は変わっている、と願いたいですが、図書館の第一の使命は、資料の永久保存であって、実際影響があるのかどうかもわからない今年の某企業の利益とか、コピー禁止の標語保持ではないはずなのです。。。少なくとも図書館自身の目的が金儲けではいわけですから、資料が万が一の事態で消失する前にきちんとした手を打って保存することは絶対に必要な作業でしょう。

ちなみに日本でよく耳にする「著作権が・・・」の一言ですが、この著作権というアイディアを発明したのはフランス人。その後各国に広まり、今ではすっかり金儲けと利益独占のためのツールに使われていますが、もともとは作品を生み出した作者の権利を守ろう、というものでした。フランスは著作権についての法律がもちろんありますが、研究や文化活動のフィールドを金儲けのフィールドと完全に分けて考えようとする傾向が強い国だと思います(現実はどうあれ)。
BnFのガリカは、ほぼすべての資料を自由にダウンロードして保存できますが、例えばブリティッシュ・ライブラリーのデジタル図書館は閲覧はできてもダウンロードができない仕組みになっていますし、他の図書館のデジタル資料では、まま、本全体のダウンロードができず、指定した1ページごとの画像ダウンロードのみ可能なケースも結構見かけます(もちろんちまちまと1ページずつ全頁をダウンロードすればすべてダウンロードできるのですが、ページ数が多い資料では現実的ではありません)。ガリカでは全頁のダウンロードを選んだ場合、画像の解像度が低くなるので、写本などの本当に細かい部分をきちんと見たいならサイト上のビューアーで見るか、ページごとに画像イメージでダウンロードするしかありませんが、それでもまとめて全頁PDFを取得するチョイスがあるのはとても助かります。たとえばBnFが持ってるマショーの写本群は、どれもPDFですぐに取得可能ですが、このおかげで、中世音楽を専門にする音楽家たちがどれだけ恩恵を受けているか!
高額なファクシミリを買わなくても、自由に写本を見ることができ、おまけに複数のバージョンを比較検討することまで可能。このおかげで、若い音楽家たちはお金がなくてもマショーが演奏できるのです!「ファクシミリを出した会社の著作権が~」と言っていたら、こんなことはできませんが、「写本を書いた人は何百年も前に死んでるから、パブリックドメインです。」の一言でポンとデジタル化してアップしてくれるおかげで、そこから新しい文化が作れます。

私は、音楽家としても、研究者としても、こうしたアーカイブにいつも助けられています。
アーカイブはとても大切。
そしてその資料に誰でもアクセスできることは、本当に大事。
それをずるがしこく使って自分のビジネスにしてしまう人も残念ながら存在しますが、その人たちの一時の利益を上回るだけの豊かな文化活動、それもこの先数百年続き新たな歴史になっていくような文化活動が、この開かれたアーカイブから生まれていきます。

日本では、文化政策というと、どこかのアーティストに自由に使えるお金を投げて、終わり、とか、天下りチックなプロジェクトに予算を積んで何となくその時だけ盛り上がるイベントができて、終わり、というパターンが非常に多い気がします(私の勘違いであってほしいのですが)。
本当に文化を豊かにしたいなら、もちろんそうした新規の投資も有意義ですが、それ以上に、例えば基本となる人の教育のために予算を用意したり、新たな文化活動の発信地となるアーカイブを支援したりするべきだと感じます。
その時一時的にお金を誰かに投げて、そこだけが潤うのではなく、多くの人に機会を与えることで長期的に見て成果が出るような、文化を「育てる」という視点での政策がなければ、文化は根付かないのでは。
文化的な活動や、天才的なアーティストの作品は、ただ単に特定のずば抜けた才能を持つ個人やグループがいたから生まれる、というものではないと思います。もちろん個人の才能も必要ですが、誰が才能を持っているかなんて、わからないのです。
才能を持つ人たちが自然に開花していけるような環境を作ることが、大事で、アーカイヴは、文化的な環境の出発点だと強く思います。

4月22日 ノートルダム様式のオルガヌム講習会

NotreDame

ノートルダム様式のオルガヌム
Early Notationと即興対位法


参加フォームはこちら
フォームを開く

【日程】
2016年4月22日(金)13h-19h
※途中適宜休憩を入れ、16時に昼からの内容の確認の時間を設けます。16時からの途中参加も可能です。

【内容】
定旋律に基づく即興対位法基本規則の実践
写本に記譜されたオルガヌム例の歌唱

【場所】
東急旗の台駅徒歩6分 「えびらホール」

【料金】
お一人様6時間の講習で5000円
★記譜法ガイドセットをお持ちの方は割引してお一人様4000円
★現代音楽割引をご希望の方はお一人様3000円

16時から参加される方はお一人様4000円
★記譜法ガイドセットをお持ちの方は割引してお一人様3000円
★現代音楽割引をご希望の方はお一人様2000円

★★各割引の併用不可。
★★通常料金でご参加される方で、お友達をご紹介いただける方には、当日言っていただきましたら紹介した方、紹介された方双方、500円キャッシュバックいたします。紹介人数に関係なく500円ですが、他の割引がすでに適用されている場合はキャッシュバックはありませんのでご注意ください。

記譜法ガイドのご購入はこちら:
ガイド購入ページはこちらをクリック

参加を希望される方には、早めのご登録をお勧めいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。

Profil

辻絢子  (Ayako TSUJI)

Author:辻絢子 (Ayako TSUJI)
フランス在住のソプラノ・ピアニスト・クラヴィシテリウム奏者・音楽学者。パリ・ソルボンヌ大学中世音楽演奏マスター在籍。パリEnsemble Arquémie主催。
中世から現代に至る幅広い時代様式の演奏法と音楽理論を操る歌手、講師として国際的に活躍中。
15世紀以前の作品、とくにアルス・シュブティリオル様式の作品演奏と、13世紀ノートルダム楽派様式の即興演奏を得意とする。
古楽だけではなく現代作品にも関心が高く、日本で大学生&院生だったころは美学芸術学を専攻し音楽に限らずアートや映画、文学など幅広い分野を対象に20世紀以降の作品を研究。
パリでの演奏活動の他、2016年より「中世音楽センター」を立ち上げ、ヨーロッパの現役中世音楽専門家、演奏家と日本の生徒をつなぐ講習会やコンサートを企画している。

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